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文房具をめぐる物語

「文房具」という言葉

「文房具」という言葉が、私は好きです。
「文房具」という言葉の響きや漢字の並びには、どこか創造性を刺激するような魅力を感じます。
「房」という漢字は、豊かに実った果実のイメージ。あるいは、柔らかな女性や母のイメージ。
新しい何かが宿る、空間のイメージ。

あなたは「文房具」と聞いて、何をイメージするでしょうか?

小学生の頃に使っていた鉛筆でしょうか?それとも消しゴム?ハサミ?筆箱?

「文房具」の文房とは、書斎という意味で古くから中国で使われていたそうです。
文房(=書斎)は、明窓浄机と表現されるように、明るい光の差し込む窓があり、ちり一つなく綺麗に整理整頓された机がある場所が理想とされました。

そこで人は本を読み、書画を嗜み、創造的な活動を続けました。

新しい芸術が生まれる画家のアトリエや、革新的なプロダクトが生まれるクリエイターの工房にも似た場所だったのです。

さらに、書斎は個人にとっての閉鎖された場所というわけではなく、人々が集まり、ときには茶や酒を飲み交わし、香を焚き、議論を交わす場所でもあったそうです。

人が交じり合い、様々な文化が生まれた18世紀におけるフランスのカフェや、文学サロンのような。

その文房(=書斎)に常備され、日常的に使われる道具が「文房具」と呼ばれました。

当初は主に筆記に使用する実用的な道具を「文房具」と呼びました。
そして実用品である「文房具」に良質良材を求めるうちに、やがて鑑賞や収蔵する芸術品としての価値が見出されるようになります。

実用的な道具としての価値を超えて、「文房具」は所有者の志の高さや聡明さを象徴する造形物としての価値を持つようになりました。

その究極が文房四宝と呼ばれるもので、筆、硯、墨、紙の四つが、文房(=書斎)で最も重要なものであるとされました。
このように「文房具」を実用的な道具としてだけではなく、芸術品として愛玩する風習は、中国では古く漢・魏の頃までさかのぼると言われています。

そんな経緯もあり、中国で「文房具」といえば、現在では芸術品や骨董品としての硯や墨などを指すことが一般的だそうです。

一方、我々日本人がイメージするいわゆる一般的な筆記用具などの「文房具」を売るお店は、中国では「文房具店」ではなく、「文具店」と呼ばれています。

すなわち、「文房具」という言葉を聞いて、子供の頃から身近にあった、鉛筆や消しゴム、あるいはノートやスケッチブックなどをイメージするのは、世界でも日本人だけなのです。

そういう意味でも、「文房具」という呼び名が持つ、日本独自の世界観を、私は大切にしたいと考えています。

人は、良い「文房具」と出会うと、何かを書きたくなります。
何かを創造したくなります。

「文房具」と人との素敵な出会いをもっと増やせれば、
世界中の人々の創造力が0.1%でも増えるかもしれない。

そうしたら、今よりもっと笑顔が溢れる幸せな世界を、創ることができるかもしれない。

そんな、人の創造力を豊かにするような道具を、私は「文房具」と呼びたいと思っています。

さて、次回からはそんな「文房具」をめぐる様々な物語を綴っていこうと思います。

お楽しみに。

執筆:文房具カフェ代表 奥泉徹

奥泉徹 プロフィール
コンセプトカフェブームの火付け役であり、海外メディアからも注目を集めている、表参道 文房具カフェ代表。TV、新聞、雑誌など国内外のメディアに多数出演。コンセプトカフェ経営やワイン、文房具をテーマにしたセミナーなども多数開催している。